楽園 上/宮部 みゆき ![]() 楽園 下/宮部 みゆき ![]() 「模倣犯」の事件から9年。 あの事件と深く関わったライター「前畑滋子」は、いまだに事件の傷を癒せずにいた。それでもようやくライターの仕事に復帰した滋子は、萩谷敏子という53歳の 女性に頼まれごとをする。 「亡くなった息子の絵に関する不思議な出来事を調べて欲しい」 敏子の息子への思いと、善良な人間性に心を動かされて調査をはじめた 滋子は、調べていくうちに、敏子の息子「等」が描いた絵の事件にも 巻き込まれていく・・。 子を失った親の想い、失わざるを得なかった親の悲劇、、、滋子のライターとしての資質と、人の哀しみと優しさが紡ぐ、喪失と再生の物語。 「宮部みゆきは日本で一番ハズレ作品のない作家である」 と、私は思っている。一番かどうかはともかく「作品のクオリティ」が高い作家、 なのは間違いはないだろう。 コンスタントに作品を描きつつ、その質を落とさない(しかも最低ラインが怖ろしく 高い)というのは稀にみる才能の持ち主であり、努力の人でもあると思う。 そんな宮部みゆきの新作、しかも現代ものミステリー、期待しないわけがない! そして、期待どうり、面白かった。 この作品で起きた事件は「模倣犯」のように大掛かりなものでもなければ、仕掛けが複雑なわけでもない。そして作品の展開は甘いといっていいのかもしれない。それでも、その優しさと切なさに、心を動かされるのだ。 人間はここに描かれるよりもっと、残酷な生き物ではあるけれど、ここに描かれるような優しさや善良さも、持っていると信じたい。 そして「模倣犯」という作品の大きさもヒシヒシと感じた。 9年たってもあの事件に疲れ、整理がつかない主人公「前畑滋子」と同じように、作者である「宮部みゆき」も、あの事件を書ききったあと、相当に疲弊したのではないだろうか。 前畑滋子は言う。 「わたしは、たぶん犯人は勝ったのだと思っています。(中略) でも、事件そのものには負けてしまいました」と。 作品の中で滋子を怒りをぶつける刑事の言葉がある。 模倣犯の事件を結局書くことのなかった滋子にだ。 「わたしはあなたのことを怒ってました!事件のことを書いてくれなかった、だから腹を立てていたんです。(中略)彼女の愚かさも軽さも、不幸な死に方もすべて忘れられませんでした。だからあなたに彼女のことを書いて欲しかった。彼女も被害者で、彼女の死も、けっして軽んじられていい死はないんだって、わたしに教えてほしかった。あなたにしか、それはできない」 私も彼女に書いて欲しかったと思う。 事件に深く関わった人間だからこそ、決して死を軽んじてなかったであろう彼女にこそ、書いていて欲しかったと思う。同時に書くことでしか、前畑滋子にはあの事件を終わる、忘れられなくても幕を引くことができないのだとも思った。 そして、たいへんだとは思うけれど、疲弊をすることだけれども、宮部みゆき氏にも、またこういう事件の物語を紡いで欲しいと思う。 それは読者の贅沢な望みだろうか? 模倣犯1 (新潮文庫) ![]() 模倣犯2 (新潮文庫) ![]() 模倣犯3 (新潮文庫) ![]() 模倣犯〈4〉 (新潮文庫) ![]() 模倣犯〈5〉 (新潮文庫) ![]() 本ブログ 読書日記 |
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今日の読書 楽園/宮部みゆき
代表作の1つにあげられる、「模倣犯」から9年後、「模倣犯」で重要な役割を担ったライターの前畑滋子が主人公となる話。自宅の下に隠され続けていた死体を透視した少年。しかし、その少年はすでにこの世にはおらず、母親が本当にその少年が超能力を持っていたのかどうか... ...続きを見る |
地下室で手記 2007/10/28 00:24 |
楽園(上・下) 宮部みゆき
カバー写真は小山泰介。装丁は鈴木正道。産経新聞連載。 「模倣犯」事件から9年。深く関わりダメージが残るフリーライター・前畑滋子。訪れた荻谷敏子の奇妙な依頼。…12歳で交通事故死した息子・等は、16年間隠されてきた& ...続きを見る |
粋な提案 2007/12/13 03:29 |
楽園(下)<宮部みゆき>−(本:2008年83冊目)−
楽園 下 出版社: 文藝春秋 (2007/08) ISBN-10: 4163263608 ...続きを見る |
デコ親父はいつも減量中 2008/06/09 22:35 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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前畑滋子が書けなくなっていたというのを、宮部さんは代弁させたかったんだと感じさせますよね。 |
茶留蔵 2007/10/28 00:27 |
あれだけの犯罪をあらゆる角度から描ききった「模倣犯」という大作は、描く側も相当のものを背負ったということでしょうか。 |
アルサ 2007/10/28 15:29 |
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